臨終
「小さい頃に、弟を亡くしたらしくて、その時から詩を書きはじめたらしいよ」
「子供の頃から、なんだあね」
「うん」
「死ぬまで、詩を書きつづけたの」
「ああ。30歳のとき、病気で亡くなるまで、ね」
「……一生を、詩に捧げたんだあね」
憂いを帯びた笑み。あまりにも儚げなそれは、到底男性のものには見えなかった。
(中性、というやつか)
日湯は女の自分より長い睫毛を見つめて、つまらなさそうにフン、と小さく鼻を鳴らした。
雲母がその態度に気分を害するわけもなく、新しい煙草に火をつける。
(きれえな姿に、煙草はある意味似合ってるのか……。馴染んじゃあいねえねぇ)