臨終


「愛していた女が、いたらしいんだけど」

「へえ」

「その女は、彼を捨てて、彼の親友の元へ行ったんだとさ」

「…………」

雲母の相も変わらず、死んだ目が。ただじっと黙って、日湯を見つめる。
日湯は人の悪い笑みを浮かべて、紫煙を吐き出した。


「境遇まで、似てるうね?」







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