白衣の天使
《私には『悪魔』を止める事ができなかった。・・・ごめんなさい》
「馬鹿馬鹿しい。」
そう言ってトッドは日記をクルクルっと丸め、ゴミ箱に投げ入れた。
丁度その頃、取り調べが終わったカトレアの姿があった。
「お世話になりました。」
トッドにお礼を言いにカトレアが近づいてきた。けれど
「この度は・・・」
何て言葉をかけて良いのか分からなかったトッドは、言葉につまってしまう。
「何かあったら連絡ください。すぐに駆けつけますから・・・」
家族を失ったカトレアに対して、トッドはそう答えるのが精一杯だったのだ。
警察署を出ると、暗い表情のカトレアを照らすかの様に、太陽が眩しく降り注いだ。
人と違う、この能力のせいで、全てを失ったカトレアの足取りは重く、心は闇に包まれている。
・・・と、誰もがそう思った。
けれど、決してそんな訳ではなく、逆にすっきりした表情をしていたのである。
そしてカトレアはその場に立ち止まり、右手をソッとお腹に当てて、こう呟いた。
「あなたは『天使』なの?『悪魔』なの?」
終