白衣の天使
「失礼します。」
カトレアが玄関に着くよりも先にニックは扉を開け、迷うことなくカトレアの側にやってきた。
昨日と変わらない丁寧な口調で
「こんにちは。」と続け、口では
「えーと、時計は・・・」
と、言っていたが、そこに時計があったのを知っていたかの様に、テーブルの前に立ったのである。
「ありました。それでは私はこれで。」
カトレアが呆然と見つめる視線の中、ニックは時計を腕につけ、帰ろうとしている。
けれどニックはすぐに立ち止まった。そしてカトレアを背中越しに
「あっ、そうそう。以前は母のアニーがお世話になりました。今はどこで何をしているのか分かりませんが、私が今、こうしているのも・・・」
そこまで言うとニックはゆっくり振り返り、顔色一つ変えずにこう言い放った。
「あなたのおかげです・・・。」