白衣の天使
そこまで話すと言葉につまり、席を立った。
棚の引き出しからアルバムらしいものを取り出し、それをカトレアの前で開き、もう一度席に戻ったのである。

「ここに写っているのが全てニックの写真です。」

その写真一枚一枚に思い入れがあるのであろう。どの写真も良い表情をしていた。

面影はあり、間違いなくカトレアの知るニックである。

そして最後のページには小さくて分かりにくいが、女性の写真があった。カトレアがその写真を手に取ると

「その写真はニックの14歳の誕生日の時のです。毎年、園の外にいた女性で・・・内緒で撮ったので分かりにくいのですが、これを撮った後、いけないと思いながらも私は話かけに行きました。」

その言葉を聞くと、カトレアは写真から目を離し園長を見つめた。
園長も何かを察したのか、一呼吸をおいて話を続ける。
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