白衣の天使
「何度も訪ねようかと思ったのですが・・・」

その言葉は本当の母として接していたセシルの気持ちが強く感じられた。

けれど職業柄行ってはいけない。そんな気持ちがあったのであろうか、下を向いているセシルから無念さが伝わってきた。

そしてセシルは、そのメモをそっとカトレアの前に置いたのである。

「これはあなたにお渡ししておきます。」

シワだらけの紙の切れ端ではあるが、これも大切な思い出の品なのであろう。必死にシワを伸ばした形跡がある。

カトレアは手帳を取り出し、メモに書いてある住所を書き写し、それを机の上に戻した。

「これはお返しします。あなたが持っていてください。」

そしてカトレアは深々と頭を下げ職員室を出た。


カトレアが職員室を出た瞬間である。

走ってきた一人の男の子とカトレアがぶつかり、男の子は転んでしまった。
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