ハルアトスの姫君―君の始まり―
「なっ…なに…?」

「いや…ジアは素直だなと思って。」

「はぁー?」

「確かに…ただ傍にいることができるのが、一番幸せなことかもしれないな。」


ジアから少し目を逸らしながらそう呟く。
ジアも少し遠くを見つめながら、自分の言葉に応じてくれる。


「…ただ…傍にいる…。」


もう記憶の中にしかいない『彼女』を想い浮かべる。
もう触れることもできない。言葉を交わすことも。
二度と会えない…この世では。


あの世を信じているわけではない。でもこうなってしまった以上、あの世を信じてみたいと思うほど、この世には『彼女』と呼べるものが何もない。


立場を分かちつつも生きている誰かを想えることはどれほど幸せか…
そんなことを言っても僻みでしかないのは痛いほど分かっていた。
でも、僻まずにいられるわけもない。
会いたい人はいる。もう会えない距離に。
生きてなどいない。もう二度と…笑いかけてはくれない。





「キース。」


不意に服の裾が掴まれた。

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