ハルアトスの姫君―君の始まり―
射抜かれた男
* * *
辺りは薄暗く、人気もない。
朝4時を少し過ぎた頃、治安維持隊の本部のポストにそっと手紙を忍ばせ、今まさにジェリーズを出ようとしている。
「…本当にいいのか、ジア?」
「女に二言はないわ。」
そう言うジアの金と銀の瞳は遠くを見つめている。
目の前にある橋を渡れば、ザーツの森へと入っていくことになる。
まだ少し遠目にしか見えないが、ザーツの森の一部から煙が上がっている。
微かにモノが焼ける匂いもする。
「…焼けてる…。森も。」
「ああ。」
「クロハ…。」
「なんだ?」
「明日は〝満月〟よ。
『あたし』は戦えない。だから守って。ミアのこと。」
「…分かってる。つーか何もねぇとこにいねぇと危ねぇよ。
おれ一人で2人を守んのはなかなかキツい。」
「最悪の場合、あたしは勝手に逃げるから放っておいて。
とにかくミアが最優先よ。」
「…ジアなら逃げられそうだもんな。すばしっこいし。」
「褒め言葉よね、それ?」
「ああ。…とにかく安全な場所を探すのが先決だ。
今日の23時59分までに安全な場所を確保し、そこに1日動かずにいるのが一番いい。」
「…そうね。
じゃあ、行きましょう。」
2人と1匹は橋を進み出した。
故郷ジェリーズに背を向けて。
辺りは薄暗く、人気もない。
朝4時を少し過ぎた頃、治安維持隊の本部のポストにそっと手紙を忍ばせ、今まさにジェリーズを出ようとしている。
「…本当にいいのか、ジア?」
「女に二言はないわ。」
そう言うジアの金と銀の瞳は遠くを見つめている。
目の前にある橋を渡れば、ザーツの森へと入っていくことになる。
まだ少し遠目にしか見えないが、ザーツの森の一部から煙が上がっている。
微かにモノが焼ける匂いもする。
「…焼けてる…。森も。」
「ああ。」
「クロハ…。」
「なんだ?」
「明日は〝満月〟よ。
『あたし』は戦えない。だから守って。ミアのこと。」
「…分かってる。つーか何もねぇとこにいねぇと危ねぇよ。
おれ一人で2人を守んのはなかなかキツい。」
「最悪の場合、あたしは勝手に逃げるから放っておいて。
とにかくミアが最優先よ。」
「…ジアなら逃げられそうだもんな。すばしっこいし。」
「褒め言葉よね、それ?」
「ああ。…とにかく安全な場所を探すのが先決だ。
今日の23時59分までに安全な場所を確保し、そこに1日動かずにいるのが一番いい。」
「…そうね。
じゃあ、行きましょう。」
2人と1匹は橋を進み出した。
故郷ジェリーズに背を向けて。