ハルアトスの姫君―君の始まり―
氷の涙と呪い
* * *
満月が近付いていた。
それは『呪い』が露見することと同じ意味を持つ。
「ジア。」
「なに?」
「もうすぐ満月だぞ。分かってんのか?」
「分かってるよ。」
『もうすぐ満月』
ジアが猫になり、ミアがヒトに戻る唯一の日。
「ねぇクロハ…。」
「なんだ?」
「やっぱりさ…気味悪いって思うかな?」
「シュリは動じねぇと思うけどな。」
「シュリは気付いてるのかなとも思うんだ。だって魔女だから…。
でもキースは…。」
正直なところ、キースの反応ばかりが気になっていた。
自分が呪われていて月に一度猫になってしまうなんて、誰が聞いたって気持ち悪いに決まっている。
クロハのように受け入れてくれた人間がいることの方が奇跡だと知っている。だからこそ…
「怖い。拒絶されることが。」
「…じゃあ逃げるか。おれはそれでも構わねぇぞ?
大体、キースはお前がいらねぇつったらもう来ねぇんだ。お前が言えばいい。」
クロハが冷たく言い放った。反射のように言葉が自然と出てくる。
「そんなこと、できないよ!」
「だろうな。」
「え…?」
クロハが軽く笑った。表情が大きく変わって少し困惑する。
「キースは拒絶しねぇよ。お前はあいつがそういう奴だと思うのか?」
「それはっ…。」
「そういうことだ。余計な心配すんじゃねーよ。」
「うわっ!」
クロハに頭を軽く叩かれる。
「…ありがと、クロハ。」
「おぅ。」
クロハが背を向けて自分の部屋へと入っていった。
その背中を最後まで見届けて、ジアも自分の部屋へと戻っていった。
満月が近付いていた。
それは『呪い』が露見することと同じ意味を持つ。
「ジア。」
「なに?」
「もうすぐ満月だぞ。分かってんのか?」
「分かってるよ。」
『もうすぐ満月』
ジアが猫になり、ミアがヒトに戻る唯一の日。
「ねぇクロハ…。」
「なんだ?」
「やっぱりさ…気味悪いって思うかな?」
「シュリは動じねぇと思うけどな。」
「シュリは気付いてるのかなとも思うんだ。だって魔女だから…。
でもキースは…。」
正直なところ、キースの反応ばかりが気になっていた。
自分が呪われていて月に一度猫になってしまうなんて、誰が聞いたって気持ち悪いに決まっている。
クロハのように受け入れてくれた人間がいることの方が奇跡だと知っている。だからこそ…
「怖い。拒絶されることが。」
「…じゃあ逃げるか。おれはそれでも構わねぇぞ?
大体、キースはお前がいらねぇつったらもう来ねぇんだ。お前が言えばいい。」
クロハが冷たく言い放った。反射のように言葉が自然と出てくる。
「そんなこと、できないよ!」
「だろうな。」
「え…?」
クロハが軽く笑った。表情が大きく変わって少し困惑する。
「キースは拒絶しねぇよ。お前はあいつがそういう奴だと思うのか?」
「それはっ…。」
「そういうことだ。余計な心配すんじゃねーよ。」
「うわっ!」
クロハに頭を軽く叩かれる。
「…ありがと、クロハ。」
「おぅ。」
クロハが背を向けて自分の部屋へと入っていった。
その背中を最後まで見届けて、ジアも自分の部屋へと戻っていった。