ハルアトスの姫君―君の始まり―
「ジェリーズを出るのよ。隊を辞めてね。」

「隊を辞める?それを隊長には…。」

「昨日の夜に思い立ったから、さっき隊の本部に手紙を置いてきたわ。
そして今からザーツの森に入ろうとしてるの。
さ、用件は言ったわ。通してちょうだい。」

「…それは出来ない。今、ザーツの森は危険だ。」

「どうして?」

「戦いはザーツの森の内部、そしてラミ川を架ける鉄橋、そしてリーズの森の内部で起こっている。
それゆえ、軍人以外は通していないのだ。
エフェリア王家は極力一般市民を巻き添えにしたくないとの意向で、それはハルアトスも同じなようでな。
まぁ…それもいつまで続くかは分からないが、それでも現在、民間人が通ることは禁止されている。
戻れ、ジア。」

「出来ない、と言ったら?」

「力ずくでもジェリーズに戻すのが我らの仕事だ。」

「…頭のオカタイ連中ね。
仕方ないわ。じゃあこっちも力でねじ伏せるしかないじゃない。」

「なにっ…?」


そう言うや否や、ガルドの喉元に突きつけられた長剣。
それは間違いなくジアのものだった。


「剣の腕前ならあなたたち二人には負けないわ。」

「ジアっ…貴様…!」

「動かないで!」


チャーリーが剣を抜こうとしたその瞬間、その動きをジアの鋭い声が止める。

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