ハルアトスの姫君―君の始まり―
「今なら私はお前を殺せる。」

「知っています。
あなたから殺気が伝わってきますから。」

「…そのブレイジリアスはジョアンナのものだな。」

「その通りです。ジョアンナ様がお作りになられたブレイジリアス。
効果は抜群。結果、コレです。」


『ブレイジリアス』は元々灰から作られる。
灰に炎の魔力を封じ込めることでその灰は落ちた先で炎を吹き上げる。
とても古い魔法で今現在使う魔法使いはほとんどいないと聞いていたから、実際に目にするのは生まれて初めてだった。
まさか、これほどまでに威力があるとは。


「何のために村を燃やした?」

「それはあなたが一番よく分かってるんじゃないですか、キース・シャンドルド。」

「…どういう意味だ?」

「あなたはどこにも属せない中途半端な存在です。」


その言葉に、自分の眉間に皺が寄ったのを感じる。もうほとんど反射のように。


「それとこの村と関係が?」

「あなたがここにいる。それだけが理由ですよ。」

「…。」


嫌な予感が背筋を走る。


「ここにいてはいけないあなたがここにいる。
それならば村ごと燃やしてあなたを消すしかない。
…つまりはそういうことですよ。」


その顔に張りついた笑顔が憎い。

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