ハルアトスの姫君―君の始まり―
「本当は何も言わずにいるつもりだった。
俺がヒトではないことは絶対に。
それこそジアが気付かない限りは言わずに、このままの位置で…傍にいる気でいた。」


全てが過去形になっているところが切ない。
もう一度瞬きをしたら涙が落ちる。


「でも、それは逃げだから。
ジアからは逃げたくない、そう思ったんだ。」


瞬きをしてしまった。
…もう、限界だ。
涙が右目から一筋零れ落ちる。


「ごめんね、勝手で。
でも…これ以上俺のせいで君を危険に晒したくない。」


キースの冷たい手が左頬に触れた。
左頬を滑る涙がその手に落ちる。


その目を見ていると分かってくる。
…もう何も言っても無駄なんだと。
決めて、しまったのだと。


「キース…っ…。」

「…ごめんね、ジア。」


キースの手がジアの目に触れる。
涙が止まらない。


「さよなら、だね。」


キースの手があたしの両目に覆い被さった。
あたしの意識はそこで途切れた。

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