ハルアトスの姫君―君の始まり―
【キースside】
眠りの魔法を、とても久しぶりに使った。
閉じた瞳から零れ落ちる涙が痛々しい。こうさせたのは紛れもなく自分なのに。
ジアを抱き上げ、シュリ様の家へと向かう。
このまま夜の闇にジアを放置しておくわけにもいかない。
彼女の表情がどんどん曇っていくことに気付いていた。
涙が溜まっていくのを黙って見ていた。
本当はそんな顔なんてさせたくなかった。
「俺の手じゃ…どんなに傍にいたって誰も守れないんだ。
そんなこと…分かってた…のにな。」
現に守れなかった過去がある。
…もう、『彼女』はいない。戻りはしない。あの日々も『彼女』も。
ジアの部屋へと辿り着く。
ゆっくりとその身体をベッドに降ろし、涙に濡れた顔をじっと見つめた。
「…弱くてごめんね。
傍にいることもできなくてごめん。約束を破ることになったね。
それでも、今できる全てで君を守るから。」
傍にいても守れない。それが今回痛いほどよく分かった。
ならばどうすれば守れるのか。
ジアの笑顔を守ること、そして呪いからの解放。
成し遂げられるかは分からない。でも成し遂げるために。
「だから今、君から離れる。」
それでもいつか、また。
そう思うくらいは許してほしい。
そっとジアの額に口づけた。
あまりにも自然に出た行動だった。
眠りの魔法を、とても久しぶりに使った。
閉じた瞳から零れ落ちる涙が痛々しい。こうさせたのは紛れもなく自分なのに。
ジアを抱き上げ、シュリ様の家へと向かう。
このまま夜の闇にジアを放置しておくわけにもいかない。
彼女の表情がどんどん曇っていくことに気付いていた。
涙が溜まっていくのを黙って見ていた。
本当はそんな顔なんてさせたくなかった。
「俺の手じゃ…どんなに傍にいたって誰も守れないんだ。
そんなこと…分かってた…のにな。」
現に守れなかった過去がある。
…もう、『彼女』はいない。戻りはしない。あの日々も『彼女』も。
ジアの部屋へと辿り着く。
ゆっくりとその身体をベッドに降ろし、涙に濡れた顔をじっと見つめた。
「…弱くてごめんね。
傍にいることもできなくてごめん。約束を破ることになったね。
それでも、今できる全てで君を守るから。」
傍にいても守れない。それが今回痛いほどよく分かった。
ならばどうすれば守れるのか。
ジアの笑顔を守ること、そして呪いからの解放。
成し遂げられるかは分からない。でも成し遂げるために。
「だから今、君から離れる。」
それでもいつか、また。
そう思うくらいは許してほしい。
そっとジアの額に口づけた。
あまりにも自然に出た行動だった。