ハルアトスの姫君―君の始まり―
「分かっていると思うが、向こうの陣営に入ることは非常に難しいぞ。
お前がお前を保ったままいられるとは思えない。」
「保ったままでいようなどとは思っていません。」
「…どうする気だ?」
「シュリ様、お願いがあります。」
「私はどうする気かと訊ねている。答え次第では協力しかねる。」
「分かっています。
だから全て説明します。その上で協力を願いたいんです。」
「…お前、一体何を考えている?」
月明かりの差し込む窓を見やった。
その光がただ真っすぐで美しく、やたらにジアを思い出させる。
「俺の魔力を抑えてください。
『魔力封印』は力が上の者のみがかけることのできる魔法です。
ですから今、俺の魔力を抑えられるのはシュリ様だけなんです。」
「魔力を抑えれば、ジョアンナに操られるぞ。」
「その通りです。
でも俺の中にシュリ様の魔力による何かが残っている以上、ジョアンナは完全に俺を操ることができません。
たとえジョアンナの魔力をもってしても、です。」
「…それは魔法使いの世界の理だからな。
だがほとんど自我を失った状態になるぞ、ほぼ間違いなく。
お前が私達に刃を向けるようになるかもしれない。」
「…なるでしょうね。
いつかなんてそう遠いものではなく、きっとすぐに、シャリアスのような手駒として扱われるようになると思います。
でも、そこが狙いだからそれでいいんです。」
「身を切り捨てるか。」
「…元々死ぬはずだったんです。
ジアのおかげで延長された人生ならば、彼女のために使うのが道理というもの。」
「お前の刃がジアを殺すことになってもか?」
「…だからお願いしたいんです。
『制限付きの魔力封印』を。」
お前がお前を保ったままいられるとは思えない。」
「保ったままでいようなどとは思っていません。」
「…どうする気だ?」
「シュリ様、お願いがあります。」
「私はどうする気かと訊ねている。答え次第では協力しかねる。」
「分かっています。
だから全て説明します。その上で協力を願いたいんです。」
「…お前、一体何を考えている?」
月明かりの差し込む窓を見やった。
その光がただ真っすぐで美しく、やたらにジアを思い出させる。
「俺の魔力を抑えてください。
『魔力封印』は力が上の者のみがかけることのできる魔法です。
ですから今、俺の魔力を抑えられるのはシュリ様だけなんです。」
「魔力を抑えれば、ジョアンナに操られるぞ。」
「その通りです。
でも俺の中にシュリ様の魔力による何かが残っている以上、ジョアンナは完全に俺を操ることができません。
たとえジョアンナの魔力をもってしても、です。」
「…それは魔法使いの世界の理だからな。
だがほとんど自我を失った状態になるぞ、ほぼ間違いなく。
お前が私達に刃を向けるようになるかもしれない。」
「…なるでしょうね。
いつかなんてそう遠いものではなく、きっとすぐに、シャリアスのような手駒として扱われるようになると思います。
でも、そこが狙いだからそれでいいんです。」
「身を切り捨てるか。」
「…元々死ぬはずだったんです。
ジアのおかげで延長された人生ならば、彼女のために使うのが道理というもの。」
「お前の刃がジアを殺すことになってもか?」
「…だからお願いしたいんです。
『制限付きの魔力封印』を。」