ハルアトスの姫君―君の始まり―
「さよなら、と…言ってしまったんです。
ジアの返事は自分で断ち切りました。
それが全てです。俺はジアを傷付けた。あの涙が証拠です。」

「傷付いたのはジアだけじゃない。」

「え…?」

「今お前がしようとしていることで一番傷付くのはジアじゃない。」


シュリ様の目が鋭く俺を捉えた。逃げられない。


「お前だよ、キース。」

「…どういう意味ですか?」

「お前は自分で自分を傷付けている。
ジアが傷付くと分かっていてあえて傷付く言葉を投げてよこした。
そしてその傷付いたジアを見て、お前もまた傷付いている。
ジアを傷付け自分を傷付け、お前はどこに辿り着く?」





辿り着く先なんか、一つしかない。





「彼女の笑顔に。
…辿り着ければ、と。」


それが今の俺の願いの全てだ。


「たとえ身も心も朽ち果ててもか?」

「はい。」


シュリ様の切なげな微笑が、静かな部屋に零れた。

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