ハルアトスの姫君―君の始まり―
「夢を見たの…。」
「夢?」
「ブレイジリアスの香りにあてられた日…
キースの背中がどんどん遠ざかって、あたしにさよならを言う夢。
…ただの夢だって…思ってたのに…。」
「正夢となったか。」
頷いた。正夢になってしまった。正夢になってほしいなんて、微塵も思っていなかったのに。嘘であればいいと、有り得ないと思えれば良かったのに。
枯れない涙が一筋、ベッドの上に落ちる。
「夢が正夢となったのか、それともお前が正夢となると分かって見た夢だったのか…。」
「…どういうこと?」
「いや、今はいい。それは問題じゃない。問題なのはお前の顔だよ。」
「酷い顔なのは知ってる…。」
「泣いたから酷い顔だと言ってるわけじゃない。
お前の『気』が酷い。とても病んでいて、弱っている。
ガラじゃない。そういう『気』は。」
ガラじゃないなんて自分が一番よく分かっている。
それでもどうにもできないのは、もういないから。
「もう…いない…。追い掛けることも…できなかった。」
言うことさえできなかった。
『行かないで』とも
『傍にいて』とも…。
キースの手が瞼に触れると同時に閉じられた瞼。
『さよなら』の声だけが耳に残った。
「夢?」
「ブレイジリアスの香りにあてられた日…
キースの背中がどんどん遠ざかって、あたしにさよならを言う夢。
…ただの夢だって…思ってたのに…。」
「正夢となったか。」
頷いた。正夢になってしまった。正夢になってほしいなんて、微塵も思っていなかったのに。嘘であればいいと、有り得ないと思えれば良かったのに。
枯れない涙が一筋、ベッドの上に落ちる。
「夢が正夢となったのか、それともお前が正夢となると分かって見た夢だったのか…。」
「…どういうこと?」
「いや、今はいい。それは問題じゃない。問題なのはお前の顔だよ。」
「酷い顔なのは知ってる…。」
「泣いたから酷い顔だと言ってるわけじゃない。
お前の『気』が酷い。とても病んでいて、弱っている。
ガラじゃない。そういう『気』は。」
ガラじゃないなんて自分が一番よく分かっている。
それでもどうにもできないのは、もういないから。
「もう…いない…。追い掛けることも…できなかった。」
言うことさえできなかった。
『行かないで』とも
『傍にいて』とも…。
キースの手が瞼に触れると同時に閉じられた瞼。
『さよなら』の声だけが耳に残った。