ハルアトスの姫君―君の始まり―
それほど長くはない距離を歩いて、目的の場所に到着した。
「中へ。」
ギィ…と鈍い音をたててゆっくりと荘厳な扉が開いていく。
王宮だけあって造りはいちいち豪華で、美しい。
「待っていた、キース・シャンドルドよ。」
その声は冷たく響いて、背筋を凍らせた。
一見すれば柔らかい表情。でも目の奥は笑ってなどいない。
「あなたが…。」
「ジョアンナ・シュバンズ。名は知っているか?」
「ええ。お噂はかねがね。」
小さく会釈をすることで目を合わせることを回避した。
まだ目を見てはいけない。長時間は絶対に。
「この城まではどうやって?」
「それがよく覚えていないんです。気がついたらここにいました。
まさかこんなにあっさり王宮に通されるとは思ってもみませんでしたが。」
「魔法使いは特別なのだよ、この王宮ではな。
たとえお前が完全な魔法使いとは言えなくても。」
動揺する素振りなんて見せてしまっては相手の思う壺だ。
そんなことは最初から分かっているのに、身体が一瞬だけ竦む。
傷を抉ろうとする言葉は、どれだけ心構えをしていようとも容赦なく刺さる。
動揺に気付いたかのように、ジョアンナは頬を緩めた。
その笑みは人を蔑む笑みだ。
「ルナに会いたい。
そういう意向で良いのだな?」
「中へ。」
ギィ…と鈍い音をたててゆっくりと荘厳な扉が開いていく。
王宮だけあって造りはいちいち豪華で、美しい。
「待っていた、キース・シャンドルドよ。」
その声は冷たく響いて、背筋を凍らせた。
一見すれば柔らかい表情。でも目の奥は笑ってなどいない。
「あなたが…。」
「ジョアンナ・シュバンズ。名は知っているか?」
「ええ。お噂はかねがね。」
小さく会釈をすることで目を合わせることを回避した。
まだ目を見てはいけない。長時間は絶対に。
「この城まではどうやって?」
「それがよく覚えていないんです。気がついたらここにいました。
まさかこんなにあっさり王宮に通されるとは思ってもみませんでしたが。」
「魔法使いは特別なのだよ、この王宮ではな。
たとえお前が完全な魔法使いとは言えなくても。」
動揺する素振りなんて見せてしまっては相手の思う壺だ。
そんなことは最初から分かっているのに、身体が一瞬だけ竦む。
傷を抉ろうとする言葉は、どれだけ心構えをしていようとも容赦なく刺さる。
動揺に気付いたかのように、ジョアンナは頬を緩めた。
その笑みは人を蔑む笑みだ。
「ルナに会いたい。
そういう意向で良いのだな?」