ハルアトスの姫君―君の始まり―
その後も何体かの遺体から臓器を消し去った。
まさに空っぽの人間を作り出す作業。
精神的に気が滅入っても、身体には何の影響も出ないところが憎い。


「訊いてもいいですか?」

「答えられるかはモノによるけれど。」

「あなたはいつからここに?」

「いつからだったのか、記憶はとても曖昧なんだけどね。
でも、気がついた時にはもうこうしてジョアンナ様の傍にいたように記憶しているよ。」

「…その前の記憶は…?」

「…ない、ね。」

「そう…ですか。」

「どうしてそんなことを?」

「いえ…ジョアンナ様と付き合いが長いようだったので、どのくらいかと気になったもので。」

「…面白いところに疑問を持つ人なんだね、君は。」

「変ですか?」

「変じゃない生き物は、もうこの城には存在しないよ。
みんなどこかおかしくて、狂っている。…狂わなきゃ、こんな世界で生きてなどいけない。」

「…どういう…意味でしょうか?」

「ヒトらしいヒトは今、この城の表舞台には立っていないということだよ。」


シャリアスは微笑みながらそう言った。
表情と言っていることがあまりにもちぐはぐすぎて、違和感しか感じられない。


「それは…国王陛下や王妃様も…?」

「もはやヒトではない、ってね。」

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