ハルアトスの姫君―君の始まり―
今、ハルアトスへ
* * *


「準備は良いか?」

「うんっ!」

「にゃー!」

「…ったく、無謀っつーかなんつーか…。」


黒いマントを羽織ったシュリが玄関のドアを開けた。
夜風が冷たい。風になびくマントが夜の闇に溶ける。


「クロハ、男のくせに怖気づいているのか?」

「ちげーよ。そうじゃねっつーの。
…ただ、勝算あんのかよ?」

「勝算?そんなものなど、あってもなくても同じことだろう?」

「同じじゃねぇよ!勝ち目もねぇのにハルアトスに乗り込んでどうすんだよ!?」

「…キースに会える。」

「…ジア?」


正直に言えば、頭の中にあるのはたったそれだけだった。
それだけのために行く、ハルアトスに。
重荷だなんて、頼りにならないだなんて、絶対に言わせない。


「それに氷の涙の所在を確かめることができる。
潜入することが可能かという問題は別として、だがな。」

「潜入なんてできねぇよ…現実的に考えろ、頼むから。」

「道を切り開くわ。自分で。」


剣の柄に触れた。
ルビーが一瞬、赤く光った。

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