ハルアトスの姫君―君の始まり―
ジアはそっとその細身の箒に手を添えた。


「…古ぼけてるけど大丈夫…かな?」

「みゃー。」

『バカにするんじゃないよ!あたいを誰だと思ってんだい?』

「え!?」

「にゃ!?」

「随分久しぶりに喋ったじゃないか。」

「シュリー!なんでこの箒喋るのー!?」

「命が元々宿っていたからだ。」

「へ?」


箒はシュリの前でピタッと止まった。


「大木はな、切られてもそのまま生き続けたり、魔力が残ってしまったりするものなのだ。」

「え…だって…木に魔力…?」

「ヴィトックスの木々には魔力が宿っていた。
…もう、何もないが。
この箒はかなり昔に作ったものだよ。
さぁ、箒よ。頼みたいことがある。ハルアトスまで飛んでくれるか?」

『ハルアトス?あらやだよーそんな遠いところまで。』

「お前でないと無理なんだ。私の魔力の消費を極限まで抑えたい。」

『まったく…あんたがそんなに切羽詰まった声を出さなきゃならないほど困った事態なのかい?』

「それはその身で感じていただろう?」

『…ま、そうだけどねぇーあたいが壊れるようなことにはしないどくれよ?』

「もちろんだ。お前を壊させたりなどしない。
お前は大変に貴重な、魔力を宿す箒なのだから。」

『魔力のサポート、きちんとするんだよ?』

「分かっている。乗るのは素人だ。ほどほどに手加減を忘れるなよ?」

『任しときなーっ!』

「よ…よろしくお願いします…。」


ジアはぺこりと頭を下げた。

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