ハルアトスの姫君―君の始まり―

浮かび上がる事実

＊　＊　＊


「…太陽…綺麗…っ…！」

「朝日が上る姿をこの場所から見るなんて、普通の人間はできないからな。」


それは確かにシュリの言う通りだ。
箒に跨ったまま、つまり宙に浮いたまま太陽を眺めるというのは生まれて初めての経験だ。


「太陽はこうして朝を知らせる。
昨日も、千年前も、そして明日も。
…自然だけが、自然の営みだけが不変なのかもしれないな。」


シュリの横顔が朝日に照らされる。
白い肌が温かい光でほんのりと明るく染まる。


「さぁ、降りるぞ。
向こうに見える城がハルアトス城だ。」





白く縦に長くそびえたつ、…荘厳な城。
気高く美しい装飾が所々に見受けられるというのに、なぜか城を纏う空気はどんよりと重い。





「降りて探すぞ。家となりそうなものをな。」

「うんっ！」

『下がるんだからしっかり掴まってなきゃダメだよ。』

「うわ！はいっ！」


箒に少しだけ叱られ、あたしはぎゅっと箒を握る手に力を込めた。