ハルアトスの姫君―君の始まり―
降り立った先は小さな村。
名前は分からない。



「…人、いないね。」

「イキモノの気配すらないな。ヒトはおろか、カエルの鳴き声一つ聞こえない。」

「薄気味悪ぃな。」


どんよりとした空気。
空が曇っていることもその空気の重さに拍車をかける。


それほど古くはない家もそれなりにあるというのに、人が誰も歩いていない村は確かにどこか〝異常〟だ。


「…中に人は住んでいるのか?」

「わ、分かんない…。」

「ならば開けてみるか。」

「え…?」


シュリが一番端にある小さな家に手をかざす。
その瞬間、ドアが開いた。


「ま、魔法で開けたの?」

「鍵を解除する魔法は必要なかった。
…中にも誰もいない。主は留守か?」


シュリが家に触れる。その瞳を閉じたまま。


「…そうか、主は死んだか。我々が住まわせてもらっても構わぬか?」


…どうやらシュリは家と話をしているらしい。


「家が決まったぞ、ジア。ここが仮の住まいだ。」

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