ハルアトスの姫君―君の始まり―
「これはこれは、大変失礼致しました。」


そう言ってシャリアスが恭しく頭を下げた。
その姿を冷たい表情で見つめるシュリに、妙に落ち着かない気持ちになる。


…シュリ。あなたの恋人…なんだよね。
〝同じ〟シャリアス…なんだよね?
心の中で問い掛ける。


「…ジョアンナは城か?」

「ええ。」

「あやつが私達に〝会いたい〟と?」

「仰る通りです。」

「ならば向こうが来るのが筋だ。」

「…まったく、敵いませんね。〝あなた〟には。」

「下がれ、シャリアス。そして伝えろ。会いたいのならばお前が来いとな。」

「あなたが仰るのならば、と言いたいところですがそう言うわけにも参りません。
…少々手荒になりますが、ご了承を。」


シャリアスがそう言うや否や、その手から小さな竜巻のようなものがジアたちをめがけて飛んでくる。


「っ…きゃあ!」

「ジアっ!ってうわ!」


風で浮かびあがったミアがクロハの顔にぶつかる。
ミアの身体を顔で受け止めたクロハはそのまま腕にミアを抱いた。


「必要最小限でいきましょう。というわけで君はお留守番です、クロハ・ローシュ。」


その言葉を最後に竜巻が大きく舞い上がる。
ハルアトス城を取り囲むように風が吹き荒れた。

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