ハルアトスの姫君―君の始まり―
「話は尽きぬな、シュリ。
だが、お前と話している場合ではない。
せっかく招いたのだ、〝姫君〟を。」

「っ…。」


あえて強調される姫君という響き。
それでもあたしには全く身に覚えのない響きだ。
しかし、ジョアンナの冷たい瞳は今はただ、自分にのみ注がれている。










「ようこそ、ジア。
いや、ここでは真名で呼ぶべきか?」

「マナ…?」

「真実の名前。お前の名前だよ、ジア。
お前の身分を示す、ホントウの名前。」


…ホントウノナマエ…?
それは一体何のことなのだろう。


ジョアンナの言葉に思考が全くと言っていいほどついていかない。
まるで呪文でも聞いているような気分になる。










「はじめまして、ジア・ウォリティアヌ・ハルアトス。」

「え…?」

「正式なハルアトス王家の王位継承者よ。
…私が殺しそびれた、命よ。」


ジョアンナの口角が再び上がった。

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