ハルアトスの姫君―君の始まり―
「思い出せ、シュリよ。
最初に歪みを生んだのは私ではない。
卑しき獣、〝ヒト〟であろう?
私もお前もその歪みに巻き込まれた善良なる魔力を持つ者。
歪みを生んだヒトに制裁を。
これはある種、歪みを正す方法だ。」

「歪みに歪みを重ねても新たな歪みを生むだけだ。」

「…そうだろうな。
しかしもはや理性で止められるものでもない。
ジア、お前もそう思うだろう?
目的のためには手段など選んでられない。
必要なもの以外、全て切り捨てる。
…それを、お前は選んだのだろう?」


…否定は、できない。
そう、決めた。
―――生きるために、剣を取った。
―――守るために、斬ると決めた。


「理由なんて問題ではない。
何を選んだか、それが全てだ。
…さて、私は姫君に話がある。
魔女は過去と戯れると良い。
…シャリアス。お前の出番だよ。」

「はい。」


やや表情を柔らかくして、シャリアスが一歩進み出る。


「この魔女を殺せ。お前の任務だ。」

「承知致しました。
では、場所を変えましょう。シュリ・ヴァールズ。
仲間にぜひ、挨拶を。これが最期になるでしょうから。」

「…随分な自信だな。お前の方こそ、主人の顔を見るのはおそらく最期になるだろう。しかと見ておくべきだな。」

「ではお互いに後悔はない、ということで。」

「シュリっ…!」


たった一度、明るく光ってシュリとシャリアスがジアの視界から消え去った。

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