ハルアトスの姫君―君の始まり―
魔女の涙
【シュリside】
目を開けると、重厚な造りの広間に移動していた。
「ここはどこだ?」
「そんなの、知る必要がありますか?」
「ただの好奇心だ。」
「…面白い答えですね、シュリ・ヴァールズ。
ここは華吹雪、と呼ばれる場所です。」
「王宮では場所に随分とこじゃれた名前を付けるのだな。」
「そうですね。
ところで、好きな花はありますか?」
そう言って微笑むシャリアス。
その表情の奥に潜む感情は、私の知るシャリアスがかつて抱いていたものではないことは明白であるはずなのに、目の前にある表情が笑顔であるが故に思い出す。
―――一度呼び起こしてしまった、忘れたくて忘れたくない記憶を。
「好きな花なんて訊いてどうする?」
「好奇心ですよ。」
「…面白いな。」
「それで、好きな花は?」
一瞬躊躇う。それでも好きな花は世界にたった一つしか存在しない。
「ピュアラズリだ。」
「花詞は確か…。」
「〝あなたを永遠に忘れない〟だ。」
忘れない。お前のことは。
…こんな終わりを迎えて、忘れられるはずもない。
「…思い出の花、ですか?」
お前との思い出だよ、シャリアス。
そんなことも忘れてしまったのか、と問い詰めたくなる。
それほど無駄なことはない。
…終わらせよう。そして、終わろう。この朽ちた関係も想いも全て。
目を開けると、重厚な造りの広間に移動していた。
「ここはどこだ?」
「そんなの、知る必要がありますか?」
「ただの好奇心だ。」
「…面白い答えですね、シュリ・ヴァールズ。
ここは華吹雪、と呼ばれる場所です。」
「王宮では場所に随分とこじゃれた名前を付けるのだな。」
「そうですね。
ところで、好きな花はありますか?」
そう言って微笑むシャリアス。
その表情の奥に潜む感情は、私の知るシャリアスがかつて抱いていたものではないことは明白であるはずなのに、目の前にある表情が笑顔であるが故に思い出す。
―――一度呼び起こしてしまった、忘れたくて忘れたくない記憶を。
「好きな花なんて訊いてどうする?」
「好奇心ですよ。」
「…面白いな。」
「それで、好きな花は?」
一瞬躊躇う。それでも好きな花は世界にたった一つしか存在しない。
「ピュアラズリだ。」
「花詞は確か…。」
「〝あなたを永遠に忘れない〟だ。」
忘れない。お前のことは。
…こんな終わりを迎えて、忘れられるはずもない。
「…思い出の花、ですか?」
お前との思い出だよ、シャリアス。
そんなことも忘れてしまったのか、と問い詰めたくなる。
それほど無駄なことはない。
…終わらせよう。そして、終わろう。この朽ちた関係も想いも全て。