ハルアトスの姫君―君の始まり―
目覚め
* * *
あれから1日が経ち、ジアは人間の姿に、そしてミアは猫の姿に『戻った』。
そして昼が過ぎ、夕暮れに空が染まり始めていた。
「…ジア、いつになったら出発するつもりだ。」
「目覚めないんだもん。」
「そいつの治療はもうこれ以上出来ねぇし、命に別条はない。置いていっても生き延びる。」
「…じゃあ、明日。」
「え?」
「明日の朝出発する。だから今日だけは待って。」
「…分かった。今日まで、だからな。」
「うん。」
ジアはそっと男の隣に座った。
熱は大分下がり、呼吸も安定し始めてきたものの、やはりまだ目を覚ます様子はなかった。
肩の傷は癒えたけれど、他の傷がまだ彼を蝕んでいるのは事実だった。
ジアはそっと想いを馳せた。
『ルナ』って…誰、なのだろう?
彼があんなにも切なげに呟いたものだからやけに印象に残っている。
大切な人の名前だろう、おそらく。
そんなことをぼんやりと考えていた時だった。
「…んっ…。」
何の前触れもなく、焦げ茶色の瞳がゆっくりと開いた。
あれから1日が経ち、ジアは人間の姿に、そしてミアは猫の姿に『戻った』。
そして昼が過ぎ、夕暮れに空が染まり始めていた。
「…ジア、いつになったら出発するつもりだ。」
「目覚めないんだもん。」
「そいつの治療はもうこれ以上出来ねぇし、命に別条はない。置いていっても生き延びる。」
「…じゃあ、明日。」
「え?」
「明日の朝出発する。だから今日だけは待って。」
「…分かった。今日まで、だからな。」
「うん。」
ジアはそっと男の隣に座った。
熱は大分下がり、呼吸も安定し始めてきたものの、やはりまだ目を覚ます様子はなかった。
肩の傷は癒えたけれど、他の傷がまだ彼を蝕んでいるのは事実だった。
ジアはそっと想いを馳せた。
『ルナ』って…誰、なのだろう?
彼があんなにも切なげに呟いたものだからやけに印象に残っている。
大切な人の名前だろう、おそらく。
そんなことをぼんやりと考えていた時だった。
「…んっ…。」
何の前触れもなく、焦げ茶色の瞳がゆっくりと開いた。