ハルアトスの姫君―君の始まり―
【キースside】
頭が痛い。痛くて痛くてたまらない。
そして頬を流れ落ちていく水にようやく気付く。これはどう考えても雨ではない。…涙だ。しかも俺のものではない。
頭の中で何かが弾けた音がした。
〝封印解除〟
シュリ様の声でそう聞こえた。
不意に蘇るのは、封印を施された時のシュリ様の言葉。
『ある条件下において、お前の封印された魔力は元に戻る。』
指先に、足先に、身体の中心に魔力が蘇ってくる、そんな感覚が全身を満たす。
ジョアンナの魔法の効果が薄れていく。おそらく格下の自分に対してあまり魔力を使わずとも操ることができると考えたために、自我を封印するために使用した魔力量が想像以下だったのであろう。
そんなことさえ冷静に考えられるだけの自我が戻ってくる。
目の前のジアは…あの日の俺を責めるように泣いている。
見たいのは、こんな顔じゃなかったはずなのに。
「キー…ス…?」
俺の身体から発せられた殺気がなくなったことに気付いたであろうジアが、ややあどけない表情を浮かべて俺の様子を窺う。
…前のように上手く笑って安心させてあげたいのに、それよりも何よりも申し訳なさやら、傷を付けてしまった情けなさからどんな表情をすれば良いのか分からない。上手く〝笑顔〟を作れない。
結局俺は涙が限界まで溜まったジアから目を逸らした。
「…ジア…。」
それでも名前だけは呼ぶことを止められなかった。
頭が痛い。痛くて痛くてたまらない。
そして頬を流れ落ちていく水にようやく気付く。これはどう考えても雨ではない。…涙だ。しかも俺のものではない。
頭の中で何かが弾けた音がした。
〝封印解除〟
シュリ様の声でそう聞こえた。
不意に蘇るのは、封印を施された時のシュリ様の言葉。
『ある条件下において、お前の封印された魔力は元に戻る。』
指先に、足先に、身体の中心に魔力が蘇ってくる、そんな感覚が全身を満たす。
ジョアンナの魔法の効果が薄れていく。おそらく格下の自分に対してあまり魔力を使わずとも操ることができると考えたために、自我を封印するために使用した魔力量が想像以下だったのであろう。
そんなことさえ冷静に考えられるだけの自我が戻ってくる。
目の前のジアは…あの日の俺を責めるように泣いている。
見たいのは、こんな顔じゃなかったはずなのに。
「キー…ス…?」
俺の身体から発せられた殺気がなくなったことに気付いたであろうジアが、ややあどけない表情を浮かべて俺の様子を窺う。
…前のように上手く笑って安心させてあげたいのに、それよりも何よりも申し訳なさやら、傷を付けてしまった情けなさからどんな表情をすれば良いのか分からない。上手く〝笑顔〟を作れない。
結局俺は涙が限界まで溜まったジアから目を逸らした。
「…ジア…。」
それでも名前だけは呼ぶことを止められなかった。