ハルアトスの姫君―君の始まり―
「なっ…なにこれっ…!」
「ジア、俺の声の方に手を伸ばして。」
「へっ?」
「いいから!」
「っ…うん!」
光った床に開いた黒くて大きな穴に落ち、キースの姿が見えない。
それでもなんとか声のした方に手を伸ばす。
「…捕まえた。」
「え…?」
どんどん落ちていく感覚が足の方から伝わってくる中で、ふっと掴まれた右腕がぐっと引かれた。懐かしい香りがふわりと鼻をくすぐる。
光が一筋も入らない不思議な空間のせいで顔はどれだけ近付こうとも見えない。ただ、手から伝わる体温や背中に回った腕の強さだけは本物だと信じられる。
「どこにどう落ちるかまではさすがに俺にも分からないから、少なくとも離れ離れにはならないようにってことで。
…ちゃんと掴んでね、ジアも。」
「…う、うん…。」
暗闇で良かった。素直にそう思う。
抱きしめられてぐっと距離が近付いたのもそうだが、声のする感じや伝わる重みから考えるに、顔の位置が相当近い。これで光があったとすると、恥ずかしさは尋常じゃない。
「俺がつけた傷は大丈夫?」
「キースこそ…あたし結構…手加減しなかったよ…?」
「手加減しなかったのは俺の方だよ。俺は大丈夫。ジアは?」
「…正直言うとちょっと痛いけど、でも死んじゃったりしないから大丈夫。」
「それは心強いな。でも…もうジアには戦わせないから。
…今度こそちゃんと守るよ。守りたいって思うから。」
それ以上はどちらも言葉が続かなかった。
「ジア、俺の声の方に手を伸ばして。」
「へっ?」
「いいから!」
「っ…うん!」
光った床に開いた黒くて大きな穴に落ち、キースの姿が見えない。
それでもなんとか声のした方に手を伸ばす。
「…捕まえた。」
「え…?」
どんどん落ちていく感覚が足の方から伝わってくる中で、ふっと掴まれた右腕がぐっと引かれた。懐かしい香りがふわりと鼻をくすぐる。
光が一筋も入らない不思議な空間のせいで顔はどれだけ近付こうとも見えない。ただ、手から伝わる体温や背中に回った腕の強さだけは本物だと信じられる。
「どこにどう落ちるかまではさすがに俺にも分からないから、少なくとも離れ離れにはならないようにってことで。
…ちゃんと掴んでね、ジアも。」
「…う、うん…。」
暗闇で良かった。素直にそう思う。
抱きしめられてぐっと距離が近付いたのもそうだが、声のする感じや伝わる重みから考えるに、顔の位置が相当近い。これで光があったとすると、恥ずかしさは尋常じゃない。
「俺がつけた傷は大丈夫?」
「キースこそ…あたし結構…手加減しなかったよ…?」
「手加減しなかったのは俺の方だよ。俺は大丈夫。ジアは?」
「…正直言うとちょっと痛いけど、でも死んじゃったりしないから大丈夫。」
「それは心強いな。でも…もうジアには戦わせないから。
…今度こそちゃんと守るよ。守りたいって思うから。」
それ以上はどちらも言葉が続かなかった。