ハルアトスの姫君―君の始まり―
そしてゆっくりとその視線がシュリに移った。


「封印解除の条件は〝生命の危機に瀕すること〟ですね?」

「正解だ。だがもう一つ…。」

「〝ジアの涙〟も、でしょうか?」

「そうだ。お前に立ち向かったジアに感謝しろ。」

「…分かっています。」


短いやり取りの後でさらにキースの視線はジョアンナに戻った。


「あなたがジアとミアに呪いを施した張本人であり、この城、ひいては世界を破壊へと導こうとしていることも明白だ。操られた自我のない〝自分〟が造らせられたレスソルジャーは数知れない。国王、王妃のレプリカを造り、意のままに動かしていたのも全ては思惑通りだったのでしょう?」

「…そうだな。全ては破壊と終焉を望むが故だ。」


ジョアンナは唇に薄く笑いを浮かべたまま、呟くようにそう零した。


「あなた個人の感情や思いとしてそれらを抱くのは否定もしませんし止めもしません。
ですが、それにジアを巻き込むのは許さない。」

「時計の歪みを正せば、私に有利に動くことになるぞ。」

「…それも承知の上です。あなたにジアは渡さない。」

「…どういう…こと…?」


理解が追い付かない。雲の上で繰り広げられている会話は分からないことが多すぎる。緊迫した空気の中にはそれに突っ込む余地すら残されていない。


「お前に両目の魔力が戻るということだ。
数百年に一度、ハルアトス王家に生まれるという〝強大な二つの力を別に持つ双子〟。それがお前とミアなのだよ。」

「強大な力…?」


瞳に宿された魔力ということなのだろうが、見当もつかない。特に自分については。

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