ハルアトスの姫君―君の始まり―
* * *


「感動の再会を果たしているところ申し訳ないのだけど…ミア…と呼んでもいいかな、お姫様?」

「はい。」

「早速だけど癒しの力を使ってもらいたい。」


傷だらけのシャリアスの顔は必死だ。
シュリはといえば、閉じそうになる時空の穴に魔力を送り続けている。


「僕にはもう魔力が残っていない。怪我のせいで消耗している。身体が回復すれば魔力はそれなりに戻ってくる。
…それと、できるかどうかは分からないけれど、君の魔力を一時的に分けてもらいたい。」

「私はどうすれば…。」

「僕の背に手をかざして。多分君の魔力をもってすれば僕の傷なんて治る。」

「ミアの魔力はそんなにあるのか…?」

「この状況で最も魔力を持っているのはミアだよ。僕が今底辺だ。そしてシュリの魔力の残量もそれなりに底が見えている状態。
…時計がこの穴に飲み込まれたら終わりだ。穴自体が縮まないように一定の魔力を送り、時計に綻びが生じないように最低限度の魔力を送る。今必要なのは二重に魔力を送り続けることなんだ。
困ったことに向こうはいつ出てくるか分からないからね。まぁ、キースの力ならば多少閉じたところで強引に破って出てくるかもしれないけど。」

「…だが奴は〝中〟で無茶をするに決まっている。あいつの魔力だっていずれ尽きる。相手はジョアンナだぞ!?」

「分かってるよ。だからこちらはこちらとしてできる限りのサポートをしよう。
だからまずはミア、頼む。」

「はい。」


ミアは力強く頷いた。そしてシャリアスの背後に回り、手をかざす。
心の中で強く念じ、その想いと身体中を駆け巡る、まだ身体には馴染まない膨大な魔力を手に集中させていく。


「っ…!」


ミアの小さな悲鳴と共に、シャリアスの身体が眩く光った。

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