ハルアトスの姫君―君の始まり―
* * *


「っ…。」

「ミア!」


ぐらりと傾いだミアの身体を抱きとめて支えたのはクロハだった。


「…支えるくらいしか、おれにはできねぇけど。」

「っ…あ、ありがとう。」


ミアの額から汗が滴る。
クロハはぎゅっとその身体を後ろから抱きしめた。


「倒れねぇように、ちゃんと支えてやっから。
…だからお前はジアとキースを信じて力、使い果たせ。
使い果たした後のことは任せろ。」

「…お願いっ!」


ミアが両手から魔力を放出したその瞬間
―――一筋の風が塔の中を吹き抜けた。










その風に導かれるように、白い球体が穴からゆっくりと浮かびあがった。その球体は風を帯びている。


風が止んだ。


コトンと軽い足音が二つ、床に響いた。

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