ハルアトスの姫君―君の始まり―
返ってくるはずのない声が返って来て、思わず振り返ってドアを開けた。


「ミ…ア…な、なんで…つーか…お前なんで泣いてっ…。」


ポロポロと静かに涙を零すミアを見つめることしかできない。細い指で拭っても拭っても落ちてくる涙。こんな状況を誰かに見られたら…確実に誤解を生む。


「と、とにかく中入れ！」


おれはそう言ってミアの腕を引いた。パタンと無機質なドアの閉まる音がする。ミアのすすり泣く音以外は何もしないからこそ気まずい。


「…泣くなって…頼むから。お前に泣かれんの…得意じゃない。」

「っ…だって…クロハ…。」


どうしようか。ここで、距離を詰めてしまえばいいのだろうか？
でもここでそんなことを安易に言ってミアを困惑させても良いのだろうか？
色々な疑問が浮かんでは消え、また浮かぶ。そうしてまごつくおれは何も言えない。


でも、思ったんじゃないのか…おれ。
言えるときに言っとけば良かったって。
―――自分のものにしたい、って。










「…嘘、なんかじゃねーよ。ミアのことが好きだ。
ずっと、ずっと好きだった。」










衝動でもなんでもよくなった。
正直言えば、どうにでもなれって思った。

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