ハルアトスの姫君―君の始まり―
「…好き…ずっと…私もずっと…言いたかった…。
呪いが解けたら…言おうって思ってた…。だからっ…。」

「っ…!」


ミアの腕を引いたのは、我慢の限界だったからだ。
その華奢な身体を抱き寄せる。柔らかくて優しい香りが鼻をくすぐった。


「お前から詰めてくんなよ…。」

「え…な…なに…?」


距離をどう取れば良いのか悩んでいたのがばからしくなってくる。
おれの悩みを吹き飛ばすように、ミアが軽々と距離を詰めてきた、なんて。


「…かっこ悪ぃな、おれ。」

「なんで…?」

「ミアに全部かっこいいこと言われたし。」

「わ、私かっこいいことなんて…。」

「言ってるよ。…ま、そこで自覚ないところがミアだけど。」

「そんなことっ…。」

「そうだよな…今まで不自由に生きてきたんだ。
…お前はもう自由なんだよな。つーか自由じゃなきゃだめなんだ。」


おれはそう言いながらミアの頭を撫でた。するとミアの方がきゅっと寄り添ってくる。ミアの腕が背中に回ったことを感じる。


「お父様もお母様も、呪いが解けてお会いした時言ってくれたの。
私は姫である前に一人の人間だからって。
…だから、立場がどうとかそんなことくらいで色んな事を諦めるつもりはないの。
同じ人間同士で越えられないことなんて…多分ないって思う…から。」


…ミアには敵わない。ジアにだって敵わないけど。
多分勝てないって思うのはこういう強さなのだと思う。


どんな逆境にも負けない、強く気高い瞳とその意志にはきっと一生敵わない。
そんなことを思いながら、抱きしめる腕に力を込めた。

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