ハルアトスの姫君―君の始まり―
「うそ…なんで…。」

「クロハの治療が素晴らしかったから、だろうね。」

「んなわけねーだろ…。どんなにおれの治療が適切でも、傷跡一つ残さずに治るわけがねぇし…ミアだって…。」

「ミア?」

「…なんでもねぇよ。」

「…そっか。
まだ微熱はあるけど、ついていくだけなら出来るから…。
俺も一緒に行ってもいいかな?もしかしたら役に立つかもしれない。君たちよりは長く生きてるし。」

「え?」

「まぁ…ほんの少しだけ、だけど。」


何かを含んだような表情を浮かべるキース。
しかし、その意図までは読み取れない。


「見たところ、剣士は一人なようだね。
…それなら俺の腕も役に立つ。」

「え…?」

「剣は使えるから。
クロハは戦いが専門ではないだろう?」

「自分とミアくらいは守れるけどな。」

「でもジアを守ることは出来ない。」

「あっ…あたしの身は自分で守る!」

「…俺の命の使い方は、ジアが決めればいい。」

「え…?」


表情がすっと変わる。
穏やかな顔ではなく、ただ真っすぐに一人の〝剣士〟としての彼がそこにあった。

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