ハルアトスの姫君―君の始まり―
epilogue―ただ、君だけを想う―
* * *
キースが城を去ってから半年ほどが経った。
落ち着きを取り戻した城では今日、復活の祭典が行われる。
あたしとミアはここで初めて市民の前に立つことになる。
もう12月だ。気付けば19歳の誕生日を終えていた。
戦いを終えてからそれほど月日が経ったというのに、あまり実感を伴ってはいない。
「ジア様、目をお閉じください。」
「あ、ごめんなさい。」
城には使用人が戻っていて、あたしのドレスの仕立てから化粧まで全てがそれらの人の手によって行われた。
「いかがでしょう?」
「…やっぱり化粧とか…慣れてないから変な感じ…。」
「そんなことありませんわ、ジア様。大変よくお似合いです。」
「あ、ありがと…。」
あまり濃すぎない化粧に胸を撫で下ろすけれども、これではまるで剣士には見えない。…もう、元剣士と言った方が正しいかもしれない。
城に戻り、争いのなくなった今となってはあたしの剣術の腕も必要とされない。それよりもあたしに課せられたのは王女としての教養、作法を身につけること、そして膨大な魔力を統制していくことだった。
「ミア様は陛下の元へいらしているそうです。」
「分かった。じゃああたしも向かうわ。」
「ご案内いたします。」
一人で行動することがほとんどといっていいほどできなくなり、常に傍には誰かがいるようになった。
…それも、姫としては仕方のないことなのかもしれないけれど。
〝姫〟とは無縁の生き方を長年してきたせいか、城の生活に窮屈さを感じているのは事実だった。
それと、ぽっかりと開いた穴のようなものも感じていた。
キースが城を去ってから半年ほどが経った。
落ち着きを取り戻した城では今日、復活の祭典が行われる。
あたしとミアはここで初めて市民の前に立つことになる。
もう12月だ。気付けば19歳の誕生日を終えていた。
戦いを終えてからそれほど月日が経ったというのに、あまり実感を伴ってはいない。
「ジア様、目をお閉じください。」
「あ、ごめんなさい。」
城には使用人が戻っていて、あたしのドレスの仕立てから化粧まで全てがそれらの人の手によって行われた。
「いかがでしょう?」
「…やっぱり化粧とか…慣れてないから変な感じ…。」
「そんなことありませんわ、ジア様。大変よくお似合いです。」
「あ、ありがと…。」
あまり濃すぎない化粧に胸を撫で下ろすけれども、これではまるで剣士には見えない。…もう、元剣士と言った方が正しいかもしれない。
城に戻り、争いのなくなった今となってはあたしの剣術の腕も必要とされない。それよりもあたしに課せられたのは王女としての教養、作法を身につけること、そして膨大な魔力を統制していくことだった。
「ミア様は陛下の元へいらしているそうです。」
「分かった。じゃああたしも向かうわ。」
「ご案内いたします。」
一人で行動することがほとんどといっていいほどできなくなり、常に傍には誰かがいるようになった。
…それも、姫としては仕方のないことなのかもしれないけれど。
〝姫〟とは無縁の生き方を長年してきたせいか、城の生活に窮屈さを感じているのは事実だった。
それと、ぽっかりと開いた穴のようなものも感じていた。