ハルアトスの姫君―君の始まり―
「あら、ジア。今日も早いのねぇ…それにミアも。」

 あくびをしながら店を開けたのは少しふっくらとした体形。そして赤毛を頭のてっぺんで無造作にまとめた女性。クロハのお母さんだ。

「メアリーおばさん!おはよう。」
「おはよう、ジア。今日も朝の訓練かい?」
「そうなの!だからクロハにミアをお願いしようかなーって思って。」
「クロハならまだ寝てるのよ…。昨日遅くまで勉強してたみたいでね。ミアなら私が預かっておくわ。ミアはうちの看板娘だもの。」

 メアリーがミアにウインクをすると、ミアはにゃあと一声鳴いた。

「だって、ミア?しっかり看板娘、務めるのよ?」
「にゃ。」
「それよりもジア。あなた…訓練に行くにしたってその髪、なんとかならないの?」
「え?」
 
 そう指摘されて、ジアはそっと自分の髪に触れた。

(…別にいつも通りのはず…。何か引っ掛かってる?)

「せっかく綺麗な金髪で長いんだから、手入れすれば…。」

(なるほど!そっちか!)

「あたしには女を磨いてる暇なんてないの!」
「でももう今年18になるんでしょう?」
「そうだけど…別に結婚するアテもないし…。」

 毛先をくるくると弄びながらジアはそう言った。金色の右目がつまらなそうに揺れる。そして銀色の左目も同じように揺れた。

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