ハルアトスの姫君―君の始まり―
「剣を交えれば…ってどういう意味…？」

「言葉通りの意味だよ。
ジアは…剣を交えればその相手が素人かそうではないかは…分かるだろ？」

「そりゃ…そのくらいは…。」

「だったらきっと分かるよ。」

「え？」

「…てめーはもっと分かりやすく説明出来ねぇのかよ。」

「…そうだね。
医者ならば、患部に触れればその病や怪我が分かる。そうだよね？」

「ああ。完全に、とまでは言いきれねぇけど。」

「触れれば…そのヒトが『生きているか』『死んでいるか』ももちろん分かるだろう？」

「…そりゃあな。」


顔を分かりやすく歪めながら、クロハは同意した。
話の行き先が見えないまま、ジアはただその話に耳を傾けた。


「それと同じだよ。医者にとっては『見る』『触れる』で相手のことが分かる。
それが剣士にとっては『剣を交える』ことになるってだけのこと。
…だからジア。」

「なに…？」

「剣を交えれば絶対に分かる。相手が本物のヒトなのか、そうではないか。
それに気付いた上で、剣を振るわないといけないよ。」


キースの目は諭すような目だった。
でもその中にどこか心配の二文字が潜んでいるように見える。

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