ハルアトスの姫君―君の始まり―
「…大丈夫だから。」


キースの声が耳元で聞こえた。
おそらく妙に高いジアの心拍数を緊張しているからだと捉えたらしい。
間違ってはいないけれど。


「通り過ぎるのを待とう。」


ここで戦いに巻き込まれてしまってはどうしようもない。
自分だけならまだしも、クロハとミアが近くにいる。
隊に入って訓練をしていたとは言え、実戦に近いようなことは今まで経験したことがない。
実際に人を斬ったこともなければ、守ったことも。
そんな無力な刃しかないのに、クロハとミアを守れるのか、今のジアには自信がなかった。


だからお願い。今は気付かないで…。


ジアがそう願った瞬間だった。

















「人がいるぞ!」



ジアの身体から血の気が引いた。

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