ハルアトスの姫君―君の始まり―
魔女の村、ヴィトックス
「…シュリ…様で間違いないですね。」

「随分と有名になったものだな、私も。」

「やみくもに進んできたわけではありませんので。」

「なるほど。まぁ、知名度で言えばお前もそう変わらんだろう。」

「…確かに、否定出来ません。」


力なきジアにはその余裕な会話がまるで空気のように感じられた。
ただするすると抜けていく、そんな感覚だった。


「レスソルジャーから我が村を守ってくれたこと、深く礼申しあげよう。
まずは我が村、ヴィトックスで休まれよ。」

「おい、キース。」

「ん?」

「なんだこの女…つーか何?おれらが目指してたのはここか?」

「そうだよ。シュリ様なら知ってると思うし。」

「シュリ様って…なんなんだよあいつ。」

「私の正体が知りたくば…。」


キースにしか聞こえないような声で言ったはずなのに、聞こえていたことに驚いて、クロハは背筋を伸ばした。


「ついて来い、小僧。」

「小僧だとぉ?」

「その猫も歓迎しよう。」

「にゃあ。」


それだけ言い残すと、村の奥へと歩を進めるシュリ。






「ただの猫ではないようだしな。」

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