ハルアトスの姫君―君の始まり―
「ジア。」
優しい声でそう呼ばれてゆっくりと顔を上げた。
血は相変わらず痛々しく見える。痛くはないのだろうけれど。
ジアはまだ痺れたような感覚が全身を支配し動けないでいる。
「立てるかい?」
そう言って差し出された手に躊躇する。
手を取っていいのだろうか?
あたしの手は…もう何も知らなかった頃の手じゃない。
レスソルジャーといえども、何かを殺めた。この手で。
何も動かずに、差し出された手を掴めないでいるジアの目線と同じ位置までキースの視線が下りてきた。
すると、すっと背中と膝の下にキースの腕が回った。
そのまま軽々と持ち上げられる。
さすがにフリーズしていたジアの頭も正常に動き出す。
異常事態が発生したのだから。
「きっ…キース!?」
「嫌だったらごめんね。でも、今すぐ歩けっていうのはなんだか酷な気がして。そんなに遠くはないはずだから。」
「あ…歩けるよっ…あたし…。」
「歩かせたくない。」
「え?」
「そんな顔をしているジアは…それ以上動かしたら折れてしまいそうだ。」
特に何も考えずに発した言葉なんだと直感的に分かった。
だからこそ、胸を揺さぶって突き刺さる。
折れてしまいそうな顔…してるんだ、あたし。
素直に表情に出ているところもなんだか子どもっぽくて情けない上に、こうしてキースに運ばれていることだって情けない。仮にも自分は剣士なのに。
そうは思うものの、何か分かりやすい優しさに甘えたいと思う気持ちを否定出来ない。
いつの間にか、涙が零れ落ち始めていた。
優しい声でそう呼ばれてゆっくりと顔を上げた。
血は相変わらず痛々しく見える。痛くはないのだろうけれど。
ジアはまだ痺れたような感覚が全身を支配し動けないでいる。
「立てるかい?」
そう言って差し出された手に躊躇する。
手を取っていいのだろうか?
あたしの手は…もう何も知らなかった頃の手じゃない。
レスソルジャーといえども、何かを殺めた。この手で。
何も動かずに、差し出された手を掴めないでいるジアの目線と同じ位置までキースの視線が下りてきた。
すると、すっと背中と膝の下にキースの腕が回った。
そのまま軽々と持ち上げられる。
さすがにフリーズしていたジアの頭も正常に動き出す。
異常事態が発生したのだから。
「きっ…キース!?」
「嫌だったらごめんね。でも、今すぐ歩けっていうのはなんだか酷な気がして。そんなに遠くはないはずだから。」
「あ…歩けるよっ…あたし…。」
「歩かせたくない。」
「え?」
「そんな顔をしているジアは…それ以上動かしたら折れてしまいそうだ。」
特に何も考えずに発した言葉なんだと直感的に分かった。
だからこそ、胸を揺さぶって突き刺さる。
折れてしまいそうな顔…してるんだ、あたし。
素直に表情に出ているところもなんだか子どもっぽくて情けない上に、こうしてキースに運ばれていることだって情けない。仮にも自分は剣士なのに。
そうは思うものの、何か分かりやすい優しさに甘えたいと思う気持ちを否定出来ない。
いつの間にか、涙が零れ落ち始めていた。