ハルアトスの姫君―君の始まり―
* * *


箒がとある扉の前で3回跳んだ。


「ここが部屋?」


もう一度跳ぶ。どうやら肯定の意らしい。


「案内ありがとう。」

「ジア。」

「ん?」

「ゆっくり休めよ。治療が必要ならおれに言え。」

「うん。ありがと。おいで、ミア。」

「にゃあー。」


クロハの元を離れ、ミアはジアの足元にすっと寄り添った。


「みゃみゃー。」

「大丈夫よ、ミア。
シュリの言ってたことは正論だわ。」


そう言いながら、シュリの言葉を反芻する。


『不安定なお前に教えるのは危険だからだ。』
『どこがどう不安定かは自分で考えろ。』
『決定的に足りないものも見えたはずだ。』


「あたしには…決定的に足りない『何か』がある。」


そんなの、今は該当箇所が多すぎる。
何もかもが足りない、そんな気がする。
考えてもそう簡単に答えの見つからなそうな問いだと直感的に思い、ジアは枕をぎゅっと抱きしめ、横になった。
その傍でミアが小さく丸くなっていた。

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