ハルアトスの姫君―君の始まり―
【キースside】


「表へ出るぞ。」

「はい。俺に拒否権はありませんから。」

「…もっといかつい男かと思っていた。」

「どんな噂ですか、それ?」

「なにしろお前は…。」

「それ以上はダメ、ですよ。いくらシュリ様でも。」


言葉を制止するように手を挙げた。
まだ部屋の中だ。これ以上は言わせてはならないと頭が咄嗟に判断する。


「何が、だ?」

「俺の身分を明かすことです。」

「…まだ話していないのだな。」

「はい。話す必要もないことですから。」

「話すと面倒事に巻き込むことになるからか?」

「もちろんそれもあります。
それに…。」


一瞬躊躇った。この先を言うことに。
その躊躇を察したかのようにシュリが口元に怪しく笑みを浮かべた。





「大切、になったか。『ヒト』が。」





ひとまずは笑みで誤魔化すことにした。
…上手くいったかどうかについては自信がない。

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