ハルアトスの姫君―君の始まり―
絶対的に足りないもの
＊　＊　＊　


「それで、分かったのか？」

「…該当箇所がありすぎて…。」

「だろうな。」

「ってことは全部っていうのが正解？」

「違う。」

「えぇー？じゃあ今日も教えてくれないの？氷の涙のこと…。」

「そういう約束だ。」

「約束なんてしてないっ！」

「お前が不安定だから教えることができない。
つまり、お前が安定したら教えてやれるってことだ。…理解したか？」

「…なんかいいように言いくるめられている気がするんだけど…。」

「まぁ、そこは否定出来んな。」

「もー！」

「つべこべ言わず考えろ。時間はいくらでもあるわけではないんだぞ。」

「え…？」


シュリはやや遠くを見つめながら諭すようにそう言った。
この家に来てもう1週間は経っている。
毎日考えてはいるものの、明確な『答え』なんて見つからない。
そもそも、足りないものが自分には多すぎる。そう本気で思っている。


「決断力、判断力、俊敏さ、力、機転、ドジ、バカ…とか…？」

「そういう表面的なものじゃない。」


シュリは答えをすげなく切り捨てた。
その目は窓の外を見つめている。

< 73 / 424 >
表紙・目次

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop