ハルアトスの姫君―君の始まり―
「この間?」

「えっと…あの…あたしが全然使えなかった…日の…。」

「…レスソルジャーがいきなり来た日だね。」


ジアの言葉をやんわりと否定しながらキースは言葉を続けた。


「あの日、初めてだったんだろう?」

「え?」

「実戦は初めてなように見えたから。」

「…そっか。さすがだね。」

「君より長く生きてるからね。」

「…そう…なんだ。」


そう呟きながら、この前の自分を思い出す。
たった1体斬り倒しただけで力が無くなった自分。
甘くて弱い、使えない剣士。


「ごめんね…。」

「なんでジアが謝るの?」

「あたしが…弱いから…だから…。」


喉が熱い。目頭も熱い。涙が零れ落ちそうだ。
でもここで泣くのはずるい。そう思ってジアはなんとか涙を堪えた。


「だから?」


キースの声の優しさは変わらない。
ただ優しく、言葉は紡がれる。


「…だからキースの手を汚した。」


あの日、自分の方に駆け寄ってきたキースを忘れることができないでいる。
髪から滴る血も、剣先から滴る血も。
どちらも残酷な赤だった。

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