ハルアトスの姫君―君の始まり―
「キース。」

「ん?」

「肩、貸して?」

「抱っこするよ?」

「ううん。肩さえ貸してくれれば歩けるから。酷いのは右足だけだし。」

「分かった。肩に手、かけて。」

「うん。」


ジアはキースが優しく起こしてくれるのに合わせてゆっくりと身体を起こした。
ジアの腰に回ったキースの手がぐっと支えてくれる。


「…本当にきつくない?」

「大丈夫だよ。キースって意外と心配性なんじゃない?」

「…そうかもしれないな。」

「でもこれで、氷の涙のことが聞ける。」

「そうだね。でもその前にちゃんとクロハの治療を受けること。」

「分かってるよーそんなことは。でもクロハには怒られそう。」

「どうして?」

「んな怪我ばっかしやがってとか…普通に言われちゃいそうだもん。」

「そんなこと言わないよ。ジアなら大丈夫って言ってたし。」

「え?」

「ああいう目をしたジアは大丈夫だって俺に言ってくれたよ。
ジアのこと、よく分かっているんだね、クロハは。」

「長い付き合いだもん。」

「そっか。」


他愛もない会話の末、無事にシュリの家へと戻ってきた。

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