嘘つきLove
そのまま懐中電灯を右手に持ち、
トコトコと中庭で群がる虫たちを見ては奇声をあげながら
中庭を抜けてゆく。
と、その時!
「……っ。いたあ…。」
地面に生えていた
するどい形をした葉に脚を引っ掛けてしまったみたい…。
「〜!…っ、やだあっ。もぉっ!」
王子サマなんてもー
探したくないんだからあ!
「虫とか雑草とかに
いじめられるならこんなトコくんじゃなかったあ!」
あたしは叫んでた。
なりふり構わず、
…真夜中だということさえ
忘れて。
……ガサッ
「誰かいるのかっ?」
低く重苦しい男の声。
たぶんジジイ。
でもなんでジジイ?
あたしは高校生の王子サマを探しにきたのよ?
ジジイなんて眼中にないわ。
この市山姫様が相手するわけないでしょう。
……あ、れ?
「まっ…眩しっ……!」
懐中電灯の灯りがあたしの栗色のくるくるカールな
髪の毛を照らした。
「いたぞ!」
け、警備員…!?
そ、そだった!
ここは学校。
真夜中は警備員がいるんだった!
「わ…っえっ………
どうしよ、えぇっ!」
混乱
の二文字しか頭に浮かばなくて。
あたしは完全パニクっていた。
「ああえうおあ…っ……
うわっ!」
誰かにどこかに引き込まれた。
「…いったあい……。
ああ!脚が〜かすり傷〜いやだ〜どうしよ〜!」