浮気彼氏はあたしの下僕〜フキゲン恋愛注意報



「離して」


「嫌」


「命令なんだけど」


「……じゃ、駅まで」



いつもなら繋ぎ返すけど、ただ握られているだけ。虎太は気づいているのか、ぎゅうと力強く繋いできて駅前まで絶対に離してくれなかった。



「気をつけてな」


「バイバイ」



笑顔もなく別れた。電車に乗り込むとすぐにメールが届いた。



―――――――――――

駅前までは手つないで歩
いてくれたこと嬉しかっ
た。ありがとう。またメ
ールするな。電話も。

―――――――――――



……少しの譲歩でありがとうだなんて



「バカ……」



あたしは悪くない。罪悪感が少しだけ胸に芽生えたこと、気づかないフリをした。





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