致死量カカオ

何で一瞬きょろきょろするんだ。お前以外に声を掛ける相手なんかいねえだろうが。

近くで顔を見ると顔色は昨日よりも悪く見える。
目の下にクマもあるし。


「お前お昼?」

「……あ、いえ、あ、はい。え?あ、うん」


どっちだよ。
挙動不審な豊海の姿に俺まで挙動不審になりそうだ。


「まだなら、一緒に食う?」

「――や!え?はい?え、でも!」


俺の言葉にばっと顔を上げておろおろし始める豊海に、思わず笑いがこみ上げる。

そんなにテンパらなくても……。


「落ち着けよ」

「あ、はい……」


何を想像したんだろうなあと思うほどに目がぐるぐる回る様は結構面白いけど。

面白いけど会話はまともにさせて欲しい。


何かを言いかけるように豊海が顔を上げると、また一瞬動きを止めた。

……何でかわからないけど凍り付いた様に表情までも止めて、次第にその顔には眉間に皺が寄っていく。

今まで見たような、気持ち悪いとか気を失うとか、そんな前触れの表情じゃなくて。


なんというか。
凍り付いた。それいがいにいい様がないような顔。
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