致死量カカオ
「どうし――」
「気持ち悪い、から」
……はい?
俺の言葉を遮るようにか細い声が聞こえて、隣の千恵子が「豊海?」と呼び止めるのも聞こえないのかそのまま俺から背を向けて豊海は歩き出した。
……なんだ?
そんなに体調が悪いのか?
まあ、確かに悪そうではあるんだけど。何というかいつもよりも血の気がないような体調の悪さだ。
「振られたの?」
背後から裕子が「あれー」と近づいてきて俺をバカにする。
「……盗み聞きするなよお前」
「隠れて話してたわけでもない癖に。この辺に居る人みんな聞いてたわよ」
「体調悪いんだと」
まあ、仕方ない、か。と呟いてちょっとだけイライラするキモチを抑えながら教室へと足を向けた。
気持ち悪いのは分かるけど。だけどそんなこと俺だってもう充分すぎるくらい分かってるんだから気にしないでいいのに、なんて言ったらどうするだろうか。
三日目にしてあいつがどれほどおかしくて迷惑な奴か。そんなの充分肌で感じたって言うのに。
それだけじゃなくて。
死ぬかも知れないから。